私の茶道教室
東茶会を終えて
3月5日(月)東京美術倶楽部にて東茶会が開催され濃茶・薄茶の両席を担当致しました。
今回は席主が一人だった為 私が自宅で「お茶事を行う」という趣向で企画しました。
そこでまず玄関の床を待合(寄付)と考えて演出してみました。
寄付掛けに小堀鞆音筆 蘭陵王図。家紋入りの瓶懸けに鉄瓶をかけ古染付桔梗紋の汲み出し茶碗、提げ莨盆を飾りました。官休庵では寄付の莨盆には煙管を添えません。
来場者はこの玄関にて順番を待ちます。
その後 済美庵の寄付に移動です。お客様は濃茶の呈茶席となりますが 席主としては初座のつもりです。
床には近衛家凞筆 歌懐紙「長閑さは 向かう日毎の朝霞 緑添いゆく 春の山の端」を掛けました。未だ肌寒い日が続きますが 一足早いお花見シーズンを思い描いていただけたらと言うつもり。
初座なので炭点前の道具を飾りました。
香合は型物香合番付行事役となっている 直斎好の名取河埋木香合を次ぎの代の家元一啜斎が写した物です。
炭斗は愈好斎好 菊置上折敷なので釜敷は紙釜敷にしました。不徹斎宗匠が北辰神社にて献茶をされた折 「嘉辰」と記して下った物です。羽箒は愈好斎好の一閑柄、鐶は大角豆相生鐶です。平瀬家旧蔵の物で内側の併せの部分に細かな金象嵌が施され とても綺麗な物です。火箸は時代の桑柄、灰器は直斎好 玉川炮烙 任土斎造。玉川の由縁は灰器側部に流水紋と山吹紋が施されている為 歌処の井手の玉川からだそうです。
灰匙は時代の桑柄。
お菓子は緑とピンクの掛け分けとなる とらや製の「都の春」に一足早い春を感じて頂きたく、そして九代大樋の飴釉の数茶碗で濃茶を召し上がっていただきました。
続いて済美庵本席に移動です。
亭主としては後座の風情を演出したく 床には流祖一翁在判のふくべの花入に河津桜と月光椿を入れました。
ふくべの花入は来会された宗屋若宗匠も珍しい物と仰せでした。箱は時代の物で特に書付はありませんが 花入の裏側に一翁の「守」の在判があります。
釜は天命 肩衝面取釜。長野烈氏が極めています。当日来会され もう15年近く前の事ですが 極めた際の感想など聞かせていただく機会となり とても良かったです。
水指は雲州松平家伝来の南蛮縄簾水指。素晴らしく景色が美しい物です。
茶入は瀬戸宗伯耳付茶入で 銘が潮路庵。潮路庵とは十四屋宗古の庵の事で 挽家の字形も宗古です。
茶碗は常慶造で道安好の黒茶碗。茶碗の内側はかなりカセており 文叔が長次郎焼と書いております。箱蓋表には徳川家の家紋が蒔絵されており風格があります。
茶杓は利休作。文叔筒で裏千家の仙叟の内箱、碌々斎の外箱があります。
台目畳となる小間な為 建水は木地曲、蓋置は引き切りとしました。
最後に花の間に移動して薄茶です。
床は狩野晴雪斎立信筆 源氏物語から胡蝶と紅葉の賀の対幅です。
私は近年 雅楽の舞を習い始め 昨年からは鳳笙も始めた事とこの花の間は床も脇の琵琶床も大きい為 今回の床はこの軸にしました。
会記を作るに当たり この軸から始まった為 亭主としては思い入れの深い軸です。
テーマは「雅」。
双方の軸に描かれているのは雅楽。その為 琵琶床(左側)には鉦鼓、羯鼓 、鳳笙を飾りました。
右の書院には茶碗の箱・茶杓の筒を飾り 更に冨田幸七作の老松蒔絵の冠卓に舞楽冠を飾りました。冠には桜の枝を添えました。
釜は春の代名詞にもなる桜と歌の地紋です。「いにしえへ奈良の都の八重桜 今日九重ににほひぬるかな」の歌が鋳込まれています。作は大西浄寿。
炉縁は利斎造で赤い漆で整えられ 黒で四季の草が蒔絵されている 華やかな物です。
棚は東福門院の為に宗旦が考案した及台子です。
水指は皆具の内で 高松の理平焼で次代の信吾さんとの合作。伝来型をベースに白地に正倉院の忍とう唐草紋を銀で描いた物。雅楽の渡来は奈良時代な為 地紋が繋がると考えました。
飾り火箸は愈好斎好の切子頭。茶器は柳桜蒔絵の大棗。しっかり(沢山)桜が描かれており下部には幔幕が張られている正にお花見の感じです。制作年第は江戸の後半かと。
茶碗は雅に相応しかろうと祥瑞の茶碗で丸い紋がいくつも描かれておりますが 発色がよくてスッキリしております。
替えは金海猫掻き手です。州浜型に歪まされ猫掻きも沢山施されております。
茶杓は一指斎作 銘が神楽笛。
菓子は京都の末富製で型物の鳥兜と飴細工の胡蝶です。壊れては大変とわざわざ京都から運んで下さいました。東茶会の力ですね。
今回は点心は金田中調製で床の平盛茂筆の観桜図を見ながらと言う趣向でした。
丁度観桜図には酒盛りをしているところが描かれておりましたので。
冷泉為恭の下で有職を学んだ盛茂なので 昇殿した人物と一般民衆をよく書いております。
この度は歴史ある東茶会での懸け釜をさせていただき 取り合わせに於ける空間を非常に勉強させていただきました。
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