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第13回松樹会茶会

去る5月10日 朝から初夏の陽射しに恵まれ 心地良い風が園内を吹き渡る一日となりました。
第13回松樹会茶会も 晴天下大勢のお客様をお迎え出来ました。

今回の取り合わせにおけるテーマは 「葵祭」としてみました。

勅使下向による祭礼は他に石清水八幡宮、春日大社とあるそうですが 本席床には 冷泉為恭が御神前にて祭文を奏上する画を描き 「もろびとの かざす葵のふた葉にぞ 神と君との恵みおば知れ」と賛をしたためた物を使用しました。
寄付には 尾形月耕筆の 神官が榊の枝を担いで歩く様を表した軸です。祭事のお祓いでは榊の枝は必須ですから。

花入は一指斎好の昔籠。手付きの籠ですが 十職の利斎が作ったと箱に書かれております。
花は蛍袋、黒ろうばい、突き抜きにんどうを入れてみました。
香合は 蛤。 蛤の蓋(貝殻)に一啜斎が 「平生閉口不遍事」と漆で直書きした物。貝は死んでしまうと 口を開けてしまいますが 生きている間は ぎゅっとその貝を閉じている事を 「平生閉口」となぞらえた所に興味がそそられます。

釜は下間庄兵衛造ですが 寸法がかなり締まった物で 竹の形をした珍しい釜です。節が底近くに作られ 正面には竹の芽が二本作られています。釜底も 一段底上げされて 正に竹の節の内側を現す形状です。季節的には この釜を使いたいと考え 紅鉢や小振りの道庵形の風炉に載せましたが 大きさ的に合わず 結局 鐵の算珠型をした切り合わせの風炉に併せての使用でした。

風炉先屏風は源氏車の意匠が透かされた物。葵祭りと言えば 源氏物語では車争いのシーンが想い浮かびます。
その車輪が流れる水に浸けられています。
棚は烏帽子棚。木地の棚で 点前の最後には 点前帛紗を烏帽子の形に畳み飾ります。
水指は虫明焼。胴は丸く作られていますが 口が四方となっている形状。その胴の部分には 枝垂れた松の枝が描かれて上部は花彫三島となっており 余白を感じされる 感じの良い画です。

茶器は矢籠棗。葵祭りの一連では競べ馬の神事も有ると聞き 矢の籠の形状をした物(一啜斎在判)を使用してみました。
茶椀は旦入造の赤。愈好斎が銘を「閑友」とつけられています。閑座松風を聴く友と言う意味でしょうか?
席中の釜は正に鳴りを奏でております。
替えの茶椀は 平成21年 家元不徹斎宗匠が伊勢神宮にて献茶をご奉仕された折 懸け釜をしましたが その折に銘を「八重垣」とつけていただいた御本茶椀です。神宮には幾重にも垣根があるところからの命名です。
茶杓は愈好斎作の「宝剣」。手裏に宝剣在りという禅語があるそうですが 今回は三種の神器にも剣があるように 勅使を下向される天皇をイメージしての使用です。
蓋置きは 一翁好 銘「山の神」を愈好斎が永楽妙全に作らせた物。形は丸三方。祭事には三方はつきものと。

 

菓子はツツジが咲き誇る園内から 銘御園と名付け 緑のうきしまと 赤の羊羹で作ってもらいました。
今年のツツジは少々早めに盛りを迎えてしまいましたが・・・。

末筆となりましたが 新緑と時折吹く爽やかな風の中 大勢の皆様にご来会いただけました事に感謝申しあげます。

 

 

第13回松樹会茶会 会記

於 直会殿

寄 付
 床    尾形月耕画 禰宜

本 席
 床    冷泉為恭筆 葵祭宣命使画賛
 花入   一指斎好 昔籠 利斎造
 花    季のもの
香合    蛤 一啜斎直書 「平生閉口不遍事」共箱
釜     姥口竹節形 三代庄兵衛造
 風炉    鉄 算珠
 板     織部瓦
 先     源氏車透
水指    虫明 口四方 愈好斎箱
 棚     烏帽子棚 有隣斎箱 小兵衛造
茶器    矢籠棗 一啜斎在判 好々斎箱
 替     時代菖蒲蒔絵
茶碗    赤 銘 閑友 愈好斎箱 旦入造
 替     御本半使 銘 八重垣 不徹斎箱
茶杓    愈好斎作 銘 宝剣 共筒共箱
 蓋置    一翁好写 銘 山の神 愈好斎在判共箱 妙全造
 建水    木地曲内朱
菓子    御園 名月調製
 器     愈好斎好 青漆内紅独楽透 一閑造
 莨盆    埋木亀甲 木屑造
 火入    染付冠手 得全造
 莨入    桑糸目 愈好斎在判共箱 木屑造
 煙管    一指斎好写 吉祥草 有隣斎箱  五良三郎造
 香箸    椎頭 宗三郎造
                    以上

 

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