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​平成29年 観桜茶事

平成29年3月25・26日と4月1・2・8・9の各日 観桜の趣向にて茶事を開催いたしました。
今年は少々開花が遅く 3月の際には数輪咲いている程度。4月上旬の折は五分咲きでした。
なんと言っても今回は雨に見舞われる事4回。途中から止んでくれたのが内2回と残念な天候となってしまいました。


平安の頃よりこの時期「鎮花祭」が行われた故事に基づき袴付の床には祭事を執り行う禰宜の図を掛けました。
寄付の壁には怖い顔をした昆論面掛け邪気退散を念じ 桜と言えば木花咲耶姫更には富士山と連想させる事から寄付掛は好々斎筆の富士画賛。賛は「山々の高嶺々を巡りきて 富士の裾野にかかる白雲」と記された とてもあっさりとした軸を掛けました。

 

晴天時は寄付の昴亭までお迎えに行けたのですが 雨天時には袴付から北辰軒へ至る廊下に水鉢を置き簡易蹲踞としました。

初座は直斎筆の一行「草色青々柳色黄」。  春思(春の長閑(のどか)な気持ち)と題された盛唐の詩人賈至(かし)の作。「芽生えたばかりの草は青青として 柳の新芽は黄金の色に輝く」と言う意味だそうです。

続いて炭点前の後は懐石ですが 立礼席で召し上がって頂こうと動座をお願いしました。
雨中の回が多かったので 皆様にはご迷惑をお掛けしましたが お優しい皆様にはイスで食べられる方が嬉しいとの仰せ。
何度か立礼席にて懐石をお出しした事が有りましたが今回は配膳台兼使用済みの器を載せていただく為にワゴン台を使ってみました。お詰めの下座側に広がるスペースが必要が無い事や 亭主が下げる作業をかなり省力化出来て優れものでした。
菓子は近所の菓子屋に注文した銘「柳緑花紅」。細長い胴に桜の花びらを載せての意匠。

中立では外腰掛けにお進みいただきました。
この時ばかりは 雨に打たれた露地の風情は一入でした。
日によっては露地傘を使用してのお席入りとなりました。

今回の趣向は花見なので 後座の床には花入だけを飾ってみました。花入は岡部嶺男造の縄文花器です。セオリーとは異なる為 正直 お客様の反応が怖かったのですが 逆に喜ばれた事がとても嬉しかったです。利休百首の「花見よりかへりの人に茶の湯せば花鳥の絵をも花も置まじ 」に習って力強い縄文の花器に敢えて花は入れずに飾ってみました。冒険でしたが 席入を水屋で伺っていると「Whoo」と言う反応で期待した通りの反応がありました。床とは打って変わり点前座は小兵衛造木地曲水指に常慶作黒茶碗。三年振りの使用となりましたが濃茶がとても練りやすく お茶の温度も冷めず 流石にお茶の為の茶碗と納得しました。茶杓は初お披露目の利休昨です。筒は当時の目利き随一とされた文叔(武者小路千家)が認め 内箱は仙叟宗室、外箱を碌々斎の極めがあります。釜は長野烈氏が室町後期の天命面取肩衝釜と極めた大振りの釜です。

続いて初座で使用した北辰軒に再び動座いただき薄茶です。
床を直斎筆横物の「福内」に模様替えです。
桜を形取った清閑院製の桜花抄というお菓子が席の中ではとても華やいで見えました。
長板に天竜寺青磁の酒会壺を載せ 嵯峨棗風の時代の大棗に宗入造の木守写の茶碗を合わせました。利斎作の朱漆に四季の草花が蒔絵された炉縁と相まって 華やかな取り合わせになった気がしております。
茶杓は直斎作の月花一双の内より「花」。

最後には水菓子を雨天の折には寄付にするはずだった昴亭にて 晴天時には袴付にてお出しし それぞれ窓ごしの桜をご覧いただきお見送りでした。

​平成29年 観桜茶事 会記


  袴  付(北辰軒玄関)

 

床     月耕筆 禰宜の図
      好々斎筆 富士画賛(雨天時)
 莨盆   一指斎好 桐木地手付独楽透
 火入   織部                佐藤和子造

 

  寄  付(昴亭)                    

 

床     好々斎筆 富士画賛
                 昆論面
 汲出碗  古染付桔梗図
 盆    朱塗
 莨盆   愈好斎好 手付雲錦蒔絵
 火入   備前
 煙管   一指斎好
 莨入   糸目   愈好斎箱           木屑造

  本  席(初座 北辰軒)


床    直斎筆一行 草色青々柳色黄  愈好斎箱
 脇    梅柳蒔絵硯箱
香合   備前 鶯 内箱一啜斎 外箱愈好斎
 炭斗   唐物菜籠      直斎箱
 羽箒   縞梟
 火箸   時代桑柄

 釜敷   時代籐組

 鎖      鐵 銀象嵌有          (元禄)定林造
 弦    鐵木瓜鉤         二代(天明)庄兵衛造
 鐶    真鍮 

 灰器   直斎好 玉川炮烙 共箱 外箱有隣斎  任土斎造
 灰匙   時代桑柄

立礼席
玄関床   晩霞筆 夜桜図
                   薩摩香炉を飾る

床     奥村土牛筆 富士図

  後 座(聴辰庵)

 

花入      縄文花瓶                 嶺男造
 花       なし
釜        天命肩衝面取 長野烈極
 縁   澤栗                  久以造
水指  木地曲
茶入      織部 卯の花
 袋   間道
茶碗      道庵好黒                 常慶造
茶杓     利休作  文叔筒 内箱仙そう 外箱碌々斎
 蓋置  青竹
 建水    砂張
御茶   巌の昔               柳桜園茶舗詰
菓子    柳緑花紅               明月調製
 器        縁高重


  薄 茶 席(北辰軒)


床    直斎筆 福内
釜        四方段霰撫肩釜            初代浄林造
 縁    四季草花蒔絵              利斎造
 先    不徹斎好 起風
水指   天竜寺青磁 酒会壺
 棚    長板
茶器   嵯峨棗
茶碗      木守写                  宗入造
 替    古萩  一指斎銘 腰蓑
 替    朝日
茶杓     直斎作 月花一双の内 共箱筒
 蓋置   五徳                  道也造
 建水     有隣斎好 雲錦蒔絵
御茶   路の白               柳桜園茶舗詰
菓子   桜花抄                 清閑院製
 器        埋木四方盆 錫縁名取河蒔絵
 莨盆   直斎好 貝足付             宗哲造
 火入   染付冠手                得全造
 煙管   一指斎好
 莨入   青貝

​以 上
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